デイサービス看護師は何を見ているの?観察ポイントと体調変化に気づく方法

お仕事(看護・介護)編

「デイサービスの看護師って、バイタル測るだけ?」「病院じゃないのに何をしているの?」
そう思われることもあるかもしれません。

でも実際には、利用者さんのわずかな体調変化を見逃さないよう、専門的な視点でいろいろなところに目を向け観察しています。
この記事では、現役のデイサービス看護師であるわたしだからこそ語れる具体的な観察ポイントや体調の変化にいち早く気づくための方法を解説していきたいと思います。

※バイタルとは正式名称:バイタルサインといいます。「生命兆候」を意味し体温、脈拍、血圧、呼吸の数値を測定して異常の早期発見に役立てます。


バイタルサインの数値はどのように見ているのか?

普段は自動血圧計や非接触型の体温計を使ってバイタルを測っていますが、体調に気になる点がある場合、前回の利用時や自宅で体調が悪かったと情報がある際は対応を変えています。

たとえば、

  • 非接触型ではなく脇の下で実際に体温を測る➡非接触型は基本的に皮膚の表面温度を測定するため外気温に左右されやすいところがある。
  • 血圧の数値に違和感があったり体調がおかしい時は、手動の血圧計で再測定する➡自動血圧計も機械なので何かの原因で誤作動が起こっているかも?と思ってみる。
  • 脈拍も、体調不良の場合や自動血圧計の脈の数値がおかしい時必要に応じて自分の手で実測して確認する誤作動を疑ってみたり、不整脈を疑う

こういった使い分けをすることで、まず「この数値は本当なのか?」を判断し、なんでその数値なのか?を考えるヒントになります。また、数値が高い、低い場合は普段のその利用者の数値と比べてみてどうなのか?ということも考えます。

体調はバイタルサインだけではない

バイタルサインは、血圧や体温などの「数値」で見ることができますが、私たち看護師が見ているのはそれだけではありません。
実際には、表情や声のトーン、返事のしかたなど“その人らしさ”が保たれているかも含めて観察しています。

たとえば、数値は普段と変わらないのに、どこか元気がないように見えることがあります。
そんな時に「今日はちょっと元気ないみたいだけど、どうかされました?」や「夜は眠れましたか?」等声をかけてみると、

「昨日の夜、少し胸がしんどかったんだけど、今朝は落ち着いたから来れた。朝食はあまり食べれなかったなぁ」
「夜、あまり眠れなくて…」

など、体調不良があったことがわかることもあります。こういうことが分かれば注意することができ、何かあった際の判断材料になります。

高齢の方はこちらから聞くと話しをしてくれることが多いですが、自分から不調を訴えることが少なかったり、「もう良くなったから」と話さずに済ませようとすることもあります。何を聞いても「大丈夫」という方もみえますのでそういう方が「ちょっとしんどいねぇ」と話すということは、体調はかなり悪いのだと判断できます。

少し横になって休んでもらい、体調がどうなるかをみていきます。改善すれば良し。改善しなければ相談員と話し合い次の手を考えていきます。

看護師としては、数値だけで判断せず、元気な時のいつもの動きを把握して“なんとなく違う”という違和感に目を向けることが大切だと感じています。

例えば… 

  • 認知症の利用者様。いつもより指示が入りにくく落ち着きがない。なんとなく元気がない。血圧測定と体温測定を脇の下ですると微熱がありいつもより脈が速い。風邪様の症状なし。そのときは真夏であった。                                   →脱水を疑い水分をコップ1杯摂取して横になる。時間を置いて再測定すると体温は下降、脈は落ち着いてきたがまだ早い。再度水分を促してしばらくすると脈もだんだん落ち着く。入浴はシャワー浴にしてもらい午後からは落ち着いていつも通り過ごす。水分は声掛けを行い摂取してもらう。

いつもと違うことに気が付く→非接触型の体温ではなく脇の下で実測する→異常の早期発見ができた             という流れができたかなと思います。早めに気づき早めに対処することで、利用者さんの体調も整い1日デイサービスで過ごすことができるということは、家族の介護負担の軽減にもなります。

こうした気づきが、体調不良の早期発見や対応につながることもあるので、日々の観察の中でとても大切にしている部分です。


送迎時の様子

家族からの申し送り

朝の送迎時では、家族の方がいる場合に家での様子が聞けることもあります。特にいつもと変わりなければよいのですが

  • 「今日は朝ご飯があまり食べられなかった」
  • 「昨日から歩き方が少しおかしくてね」
  • 「昨日から熱はないけど咳が出ている」
  • 「昨日は調子が悪かったのか、1日中寝ていた」

などといった、家族からの「いつもと違う」というポイントが聞けたのであれば、まずは来所時のバイタルサインを簡易的なものではなく実測値が出るものに切り替えてみたり、表情や歩行状態、会話、本人の症状を詳しく聞く等を行い体調不良は加齢的なものなのか、実は何か病気が隠れているのかを判断していき異常の早期発見につなげていきます。

車内の様子

利用者さんとの会話

ただ利用者さんを施設に連れていく…のではなく車内での会話もかなり重要になってきます。車内というのは密室だからか、あまり話をしない方でも案外ポロっと本音や自分のことを話す利用者さんが多いです。

 実は…

  • 昨日(または今朝)転んでしまった。
  • ちょっと前から食事があまり食べられない
  • 家族の調子があまり良くない
  • 便秘または下痢をしている

等々、利用者さん本人が家族に伝えていないことを話してくれる利用者さんもいます。この知り得た情報から利用している時間、何を観察しなければならないのか考える必要があります。

*利用者さんの心理としては「家族に話したら怒られるかも」「話しても仕方ない」等の気持ちがあるかもしれません。しかし、家族が知らなくて困ることがあるのもまた事実。本人の気持ちも尊重しながら必要に応じて家族やケアマネジャーに報告していくこともあります。

送迎時の行動

送迎時は、ご自分の車いすに乗車していない限りは必ずと言って良いほど何かしら動作があります。歩行している方はもちろん歩行という動作が、車いすを使用している方や全介助の方でさえ、ベッドまたは車いすから車いすへの乗車という動作がありますのでそこで「いつもと違う」レーダーが発揮することもあります。たかが移動…なんですが、朝一番に利用者さんを状態を確認するための大切な1歩だと思います。そこから、利用者さんの観察は始まっているのです!!  

食事の量や食べ方にも変化のサイン

食事中の様子も大事な観察ポイントです。

「いつもより食べる量が少ないな」と感じたときは、まず本人に声をかけて確認します。
単に「今日はこのおかずが苦手だっただけ」ということもありますが、

  • ムセが多い
  • 食べこぼしが増えている
  • 食器の持ち方がおかしい
  • 食べるペースがいつもと違う

といった小さな違和感があれば、バイタルをもう一度測ってみたり、他の職員にも様子を聞いてみたりします。

体調不良時はムセが多くなることもあり、一時的にとろみを使用することも考慮します。体調が改善してこればムセなくなる方もみえるため家族に自宅での様子を聞いてみることも判断材料としていきます。


“いつもと違う”に気づくのは、看護師だけじゃない

ありがたいことに、介護スタッフ、リハビリスタッフ等他の職員が

「送迎車の中で、こんな事言ってたよ」                               「今日、○○さんなんとなく元気がないね」
「いつもこの時間は△△をやっているのに今日はぼんやりしてる」
「歩き方がいつもと違う」
など、なにかいつもと違う…ということを教えてくれます。

結果、日中注意して観察してみたり、もう一度バイタルサインを測定してみると熱発している…ということも多々あります。

特に介護スタッフは看護師より利用者と密に関わる場面が多いため、こういった気づきを報告してくれることはありがたいです。やはり看護師だけで気づけることには限界があるので、いろんな職種の「気づき」を集めて原因を探っていくのが現場のチーム力だなと感じます。


小さな変化を見逃さないために

バイタルの数値だけでなく、顔色や表情、声のトーン、立ち上がりの様子など、
「なんか違うかも?」と感じる部分を見逃さないよう、日々観察を続けています。

小さな変化が、大きな体調変化のサインかもしれない
その“きっかけ”を早く見つけ、家族やケアマネージャーに伝えて自宅や他サービスでも様子をみてもらいながら医療につなげられるようこれからも丁寧に利用者さんと向き合っていきたいと思います。


体調が悪いときの対応

体調が悪いと本人から訴えがあった時や異常値があったとき、まずはベッドで休んでもらうことを第一選択とします。異常値や症状次第では自分の席で安静にして過ごして様子をみることもあります。

それでも改善しないときは下記のような対策を取ります。

  • 入浴ではなくシャワー浴にする→入浴は意外と体に負担がかかりやすい
  • 起きている時間を短くして横になっている時間を長く設ける
  • 値に異常が出れば家族に電話報告、そのまま様子をみるのか、迎えに来るのか、送っていくのか相談員やリーダーと相談しながら判断する。                                      →本人の状態、異常値の程度、家族の介護度等考慮して判断する。
  • バイタルサインの数値や言動などから既往歴からの症状なのか、新たに何か疾患が発生しているのか、加齢的なもの原因なのかを考え、本人に聞き取りをしたり職員同士で相談したりして原因の追究をし緊急性を考える

最後に

今回は「デイサービスの看護師はどんなところを見ているの?」という視点で書いてみました。看護師だけでは観察しきれないところも、いろんな職種からの情報が集まって再精査することで異常の早期発見につながると思います。そのため多職種との連携や割と軽視されがちな「報・連・相」も確実に行っていく必要があるのではないかなと思います。

読んでくださってありがとうございました。

デイサービスの1日の流れはこちら☛https://katagasu6123.com/daysa-bisu/

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